違法な漁業と破壊的な漁業は、持続可能性や海洋生物の多様性、海の生態系、そしてルールを守って漁業を営む人々の生活にとって、世界的に大きな脅威となっています。
違法・無報告・無規制(IUU)漁業
IUU漁業とは、政府や漁業管理機関が定めた規制に従わずに行われる漁業のことです。IUU漁業による漁獲物の金額は、年間235億ドル(約3兆6,660億円)にのぼるとされています。
違法漁業とは、漁業管理団体が定めた国内法または国際法に違反する漁業のことです。違法漁業には、免許や許可を受けていない漁業、禁止区域での漁業、禁止されている漁具を使用した漁業、漁獲枠を超過した漁業、禁止されている魚種を漁獲する漁業などが含まれます。
無報告漁業とは、関係当局に報告されないか、正しく報告されず、国内法または国際法に違反している漁業を指します。
無規制漁業は、違法漁業、無報告漁業、過剰漁獲と重なるところがあります。これは、どのような規制にも従わずに操業する漁業のことを指します。保全策や管理が講じられていない海域での漁業や、その海域の関連管理組織に加盟していない国の漁船が、その規制に従わずに漁業を行うことなどです。
すべての無規制・無報告漁業が犯罪となるわけではなく、開発途上地域での自給自足のための漁業である場合や、過失による魚種の誤報告である可能性もあります。
破壊的な漁業
破壊的な漁業とは、シアン化物や爆発物を使用した漁業のことです。シアン化物は、魚を麻痺させて、簡単に漁獲できるようにします。一方でダイナマイトのような爆発物は、魚を瞬時に殺し水面に浮かせることで、網により簡単にすくうことができます。このような破壊的な漁業は、生息地や生態系に取り返しのつかない被害を及ぼす可能性があります。
持続可能な漁業とは?
IUU漁業や破壊的な漁業へのMSCの対応
MSCでは破壊的な漁業を認めておらず、そうしたいかなる漁業もMSC漁業認証取得のための審査の対象にはなりません。
MSCプログラムでは漁業者に対して、地域、国内、または国際的な法律に違反していないかを検知するための強力な管理体系を導入するよう求めています。
MSC漁業認証を取得した漁業は、漁獲の対象である資源が、過剰漁獲やIUU漁業によって深刻な状況に陥っていないことを確実にする厳格な枠組みに則して操業しています。認証を取得した漁業は、すべての面においてMSC漁業認証規格を満たしているか確認するために、定期的な監査を受けなければなりません。
MSC漁業認証規格は、漁業者が収集するデータの質を向上させ、漁業の監視・管理・取り締まりを強化させるものです。
ある調査では、MSC漁業認証およびその取得に至るまでのプロセスから得られるデータは、漁業管理者や政府によるIUU漁業対策のための重要なツールであることが示されています。
第三者の審査機関による審査報告書は一般に公開されており、水産物のバイヤーは、漁業がIUU漁業にどう対処し、認証規格に適合するためにどのような措置を講じているのかを確認することができます。

マジェランアイナメ(メロ)漁業の漁業者 写真:Tony Fitzsimmons
IUU漁業に対する合法的な漁業の対応
マジェランアイナメ(メロ)漁業のように、MSC認証取得漁業がIUU漁業を排斥した例は多くあります。
管理不能なIUU漁業は長年にわたり、価値が高いこの魚種の漁獲量減少を招いていました。しかし、6つの主要なマジェランアイナメ漁業が断固とした行動をとったことによって、南極海におけるIUU漁業は事実上撲滅されました。現在、資源は回復して健全な状態にあります。MSCのデータでは、世界のマジェランアイナメの漁獲量の50%以上がMSC漁業認証を取得した漁業によるものです。
国際的な取り組みにより、マジェランアイナメ漁業は持続可能性に向けたさらなる改善を続けています。現在、この認証取得漁業では、漁業が接触するガンギエイを海にリリースする際に無傷であることを確認するための調査を行っています。
IUU漁業による水産物がサプライチェーンへ流入するのをMSCはどのように防ぐか
水産物が海から食卓に届くまでには、数多くの段階を経ています。MSCは、IUU漁業による水産物が合法的な市場に出回るのを防ぐための要求事項を定めたMSC CoC認証規格を設けています。この規格の要求事項により、サプライチェーンにおいて認証水産物と非認証水産物が混ざらないよう管理されます。
水産製品に付いたMSCラベルが意味するのは、サプライチェーンに含まれるすべての企業が有効なMSC CoC認証を取得していること、そしてその企業が供給する水産物は持続可能な漁業であるとして認証された漁業からのものであり、IUU漁業由来のものではないということです。
MSC CoC認証を取得し維持していくためには、第三者の審査機関によってMSC CoC認証規格に照らした定期的な監査を受ける必要があります。この認証の有効期間は3年であり、事業者は定期的に監査を受け、継続して要求事項を満たしていることを実証しなければなりません。