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持続可能な天然資源の管理は、環境の変化に対して海の豊かさや回復力、適応力を維持することにつながります。

生物多様性とは?

生物多様性とは、地球上に存在する生物が多様であるということです。フジツボからクジラ、サンゴ礁に至るまで、海に生息するすべての動物、植物、微生物も含みます。また、ある地域に生息している種の多さを表す言葉でもあります。

生物学的「ホットスポット」とは、多種多様な希少種が生息している場所のことです。そうした場所は生物多様性が高いところであり、一般的に、産卵場、保育場、餌場などの生き物の繁殖や成長にとって重要な役割を果たしています。中には、世界のほかの地域では見られない種が生息しているところもあります。

海洋生物多様性のホットスポットの例としては、ナミビア沖のベンゲラ海流大型海洋生態系や、東南アジアやオーストラリアのサンゴ礁を含むインド太平洋中部などがあり、海洋区域の中で最も多くの種が生息しています。


海洋生物多様性の重要性

生物の多様性があることで、環境の変化に対する自然の生産性、回復力、適応力が維持されます。こうした環境の変化は、気候変動、病気の蔓延、汚染、外来種、過剰漁獲、その他の人間が及ぼす影響などによって引き起こされます。生物多様性は、あるひとつの種が絶滅することで起りうる生態系への広範な悪影響を防ぐことができます。

あるひとつの種の個体数が減少したり、絶滅したとしても、生態系が機能し続けていれば、その生態系には回復力があると言えるでしょう。生態系が機能しているということは、自然のプロセスが効果的に機能しているということであり、そこには、炭素の蓄えや水のろ過など、人間のために役立つものを与えてくれるプロセスも含みます。

環形動物が有機物を消化してできた二酸化炭素を海洋植物が光合成に利用したり、サメの捕食が獲物の個体数を制御するなど、海に生息する生物種たちはそれぞれ特定の役割を担っています。生態系の中には同じような役割を果たしている種も存在しているため、ひとつの種が絶滅したとしても、別の種が同じ機能や役割を提供することができます。

しかし、こうした生物の中にはその種特有の機能を果たしている種もあり、その種が絶滅すれば何百万年にわたる進化の歴史が失われてしまうことになります。例えば、ノコギリエイは、世界で最も特異な進化を遂げたエイですが、野生生物の取引の対象となっており、混獲されることも多いため、世界で絶滅の危機に瀕しています。

生物の多様性が失われれば、自然が人類に与えてくれる食料、経済、文化的な恩恵も失われてしまいます。しかし、もし人類が地球上からいなくなったとしても、生物多様性は地球の繁栄のために不可欠なものであり続けることでしょう。マナティーもサメもホヤも、自己のために存在し、繁栄する権利があるのです。


過剰漁獲は生物多様性に悪影響を与えるか

持続可能ではない漁業や破壊的な漁業は、生物多様性に深刻なダメージを与えます。現在、世界の水産資源のおよそ34.2%が過剰漁獲されており、このままでは将来の世代のための水産資源が減り、生物多様性も減少してしまいます。

過剰漁獲は、漁獲対象の種だけでなく、漁船と接触するほかの海洋生物にも影響を与えます。サメ・エイ類は1970年代から71%減少しており、過剰漁獲がこの減少の主な原因となっています。

混獲(対象でない種を漁獲してしまうこと)は、海洋生物多様性に対する主な脅威の一つです。毎年、910万トン(年間総漁獲量の約10%)が海洋漁業によって廃棄されていると推定されています。


MSCプログラムが貢献する海洋生物多様性の保全

MSCプログラムは、漁業対象の資源が健全な状態にあり、適切な漁業管理が行われ、生物多様性への影響を最小限に抑える努力を積極的に行なっている持続可能な漁業を奨励しています。

MSC漁業認証規格の重要な要素は、より広範な生物多様性や生態系への漁業による影響を評価することです。MSCプログラムに参加する多くの漁業には、認証取得の際に条件が付けられます。この条件とは、認証を維持するために満たさなければならない一連の改善目標のことです。

2018年度から2021年度にかけて、こうした条件によって、計372件の改善が実施されました。この中には、生態系や生息域に関連する66件の改善と、絶滅危惧種・保護種の保護や混獲の削減に関連する134件の改善が含まれています。

オーストラリア東部マグロ・カジキ漁業では、ウミガメの混獲を軽減するためにサークルフック、釣り針を外す器具であるデフッカー、ラインカッターが導入されたほか、全漁船で電子モニタリングを実施しました。グリーンランドでは、ロンドン動物学会(ZSL)の協力を得て、海底の環境や生物分布を示した地図が作成され、脆弱な海洋生態系を漁業が回避できるようにしています。この調査により、水中画像から230以上の生物グループが特定されました。この漁業は、さらに広範な生態系に関連する2つの条件を除いて、ほかのすべての条件を満たすことができました。コーンウォールでは、ヘイク漁業者が漁網に特殊な音響装置を設置することで海棲哺乳類が刺網に絡まるのを防ぎ、ネズミイルカの混獲を80%削減しました。

また、MSC漁業認証規格は、世界の最優良事例、政策、科学に沿って、定期的な改定が行われています。MSCの分析では、MSCプログラムに参加し続けることで、漁業認証の業績評価の平均スコアが大幅に向上することが認められています。これは、MSCプログラムに参加している漁業が、生物多様性への影響を軽減するための改善に積極的に取り組んでいることを示しています。


海洋データで世界の生物多様性条約を支える

MSCプログラムは、国連食糧農業機関(FAO)などの国連機関の活動にも広く貢献しています。MSCのデータは、国連環境計画(UNEP)やその他の政府間組織が、過剰漁獲撲滅と生物多様性保全の国際目標に向けた進捗状況を把握するために使用されています。2020年には、持続可能な漁業と生物多様性の目標達成に向けたMSCの貢献が国連で認められました。


海の生物多様性を守るために消費者ができること

MSC「海のエコラベル」付き水産物を扱うことで、水産会社や小売業者、シェフたちは責任ある漁業の取り組みに報いるとともに、ほかの漁業者にも改善を促すことができます。消費者は持続可能なMSC認証漁業で獲られた天然のMSCラベル付き水産物を選ぶことで、より健康で、より回復力のある、豊かな海を支えていくことができます。世界の小売店やレストランでは、何万品目ものMSCラベル付き製品やメニューが販売、提供されているため、持続可能な方法で調達された水産物を簡単に見つけることができます。また、養殖魚に表示されているASC(水産養殖協議会)のラベルにも目を向けてみてください。