MSC の漁業の審査には、たくさんの人が関わっています。あなたの価値ある貢献が、その漁業のよりよい審査につながります。
MSC認証の審査を受ける漁業について、以下にもし1つでも該当した場合、あなたはその漁業のステークホルダーとなります。 MSCの審査プロセスに参加し、発言権を得ることができるのです。
- その漁業が認証を取得することにより、影響を受ける可能性がありますか?
- その漁業や、漁業が対象としている魚種、その漁業によって影響を受ける可能性がある水産資源や生態系について関心がありますか?
- その漁業が MSC 認証の審査を受けるにあたり、関連する情報をお持ちですか?
- 審査機関の審査能力などについて、ご意見をお持ちですか?
審査プロセスに参加する
ステークホルダーとして、あなたは重要な審査を行うために必要不可欠な情報源となります。科学者、漁業管理者、水産加工業者、政府機関の職員、地域の一員、自然保護活動家など、どんな立場であっても、あなたの情報は詳細な審査で役に立ちます。
あなたの考えは、以下の点で役立ちます。
- あなたやあなたの組織にとって重要な問題が考慮されること
- 漁業の審査が充分な情報を得たうえで、より包括的になること
- 審査結果がMSC漁業認証規格にきちんと従うこと
コメントする
漁業審査に対してコメントするには、審査の開始時期に、自分がステークホルダーのひとりだと審査機関に知らせなければなりません。それにより、審査機関はあなたに審査の進捗状況を随時知らせ、コメントできるタイミングをお知らせします。審査機関には、その漁業と関係のあるすべてのステークホルダーに連絡を取る義務があります。
漁業審査の段階
1. 漁業による審査入りの報告
ステークホルダーの把握、審査チームの構成が行われます。その際、審査機関は独立した専門家からなる審査チームを指名します。その審査チームがMSC漁業認証規格と照らし合わせ、漁業が規格を満たすかどうかを審査するのです。あなたもこの審査チームの構成に意見を行うことができます。
2. 審査ツリーの決定
この段階では、審査機関と審査チームにより、その漁業をどのように審査するかを定めます。MSC漁業認証規格には「標準審査ツリー」と呼ばれる既定の審査プロセスがあり、審査における業績評価指標や得点基準が定められています。標準審査ツリーは大半の漁業に用いることが可能で、多様な漁業に対して一貫性のある採点プロセスを提供します。
もしも標準審査ツリーを適用できない特殊な漁業の場合には、審査チームが審査ツリーに変更を加えます。例えば、途上国などで審査に必要な情報が不足している漁業の場合は、リスク評価に基づく審査枠組み(RBF:Risk Based Framework)を利用することができます。そうした場合は 30 日間のパブリックコメント期間が設けられ、変更が適切かどうか検討されます。
3. 情報収集、現地視察、採点
この段階では審査チームと会い、その漁業についてあなたが持つ情報を審査チームに確実に提供することができます。また、ステークホルダーは書面で情報を提供することもできます。審査機関は現地視察を実施し、地元のステークホルダーや漁業管理者、申請漁業者に聞き取り調査をします。これにより審査チームは起こりうる問題や懸念事項を確認することができます。審査チームは、技術論文や報告書などすべての関連情報を分析します。
その情報収集期間に、ステークホルダーは情報を整理し、審査ツリーに沿ってデータを提出することで、コメントを最大限に反映させることができます。例えば、特定の情報が、審査ツリーの審査事項の得点向上に繋がると審査機関に主張することができます。
4. 申請者による確認および外部査読
この段階では、審査チームが MSC規格に照らし合わせて漁業のドラフト版報告書を作成します。
ドラフト版報告書には、採点やその論理的根拠、認証の可否が書かれます。また同様に、条件付き合格の場合、必要な条件や規格に満たない事項に対する改善計画案も含まれます。その改善計画案は審査チームではなく、申請者漁業者により作成されます。
申請漁業者によるドラフト版報告書への意見提出のあと報告書は改正され、2名の独立した専門家により外部査読されます。外部査読者リストは、現地視察後に公開され、10日間の協議にかけられます。
ステークホルダーは、外部査読者が適切な経験を持つ専門家かどうか判断し、場合によっては他の査読者を推薦することもできます。
外部査読者は、ドラフト版報告書に対して書面でコメントを提出します。外部査読者によるコメントやそれに対する審査機関の返答が盛り込まれ、パブリックコメント用報告書が作成されます。
5. 最終報告書および決定
最終報告書には漁業の認証の可否に関する審査チームの最終決定が含まれています。審査チームは、パブリックコメント用報告書の協議期間中に寄せられたコメントを検討し、報告書を適切に改訂した後に最終報告書を発行します。
審査機関から MSC に対して最終報告書が送られると、MSC は漁業審査の進捗をメールで関係者に通知するとともに、MSC のウェブサイトで公開します。
異議申し立て手続き
最終報告書の発行後、15営業日以内に異議の申し立てがあった場合、MSCの異議申し立て手続きが始まります。これは独立裁定人によって漁業審査に対する異議を解決するために設けられたものです。適切な協議の後、独立裁定人は異議申し立てのあった点に関する最終決定を行います。
6.公開用報告書および認証の取得
これが最終段階です。異議申し立てが無い場合、審査を受けた漁業は晴れて認証を取得することになり、審査機関により公開用報告書が発行されます。認証の有効期間は最大 5年で、その間定期的に年次監査を受けることになります。
監査と再認証
認証の有効期間は5年間で、その間に毎年監査を受けることになります。
年次監査では、漁業の環境面および漁業管理上で大きな変化がなかったかを調べます。また、最終報告書により定められた改善のための行動計画の進捗状況を調べます。充分な進捗が認められない場合、認証は一時停止または取り消しになることがあります。ステークホルダーは監査の際、意見や新たな情報を提供できます。監査が終わると、認証機関が年次監査報告書をMSCに提供し、MSCのウェブサイト上で公開されます。再認証審査は認証取得の4 年後に行われることが多く、初回の審査と同じ段階で進められます。
異議申し立て
異議申し立てを行うには、審査プロセスの初めにステークホルダーとして登録していなければなりません。
ステークホルダーにより提案された事項が修正されていないなど、審査チームの採点に欠陥を見つけた場合には、異議申し立てをすることができます。
異議申し立てする方法
異議申し立て期間は最終報告書の発行後15営業日で、その間にステークホルダーは「異議申し立て通知」を提出します。
MSCが独立裁定人を指名します。
指名された独立裁定人が、その異議申し立て通知を受理するか決めます。
異議申し立て通知が受理されるとMSCのウェブサイト上に掲載されます。
独立裁定人は示談が可能か検討する為に関係者との電話会議を手配します。
それから15営業日ほどで書面による通知期間があります。提出された書面は MSCのウェブサ イトにも掲載されます。
審査機関は20営業日以内に申し立て事項を検討し、最終報告書と文書による返答を行います。
独立裁定人は、異議申し立て申請者、漁業者、審査機関に意見を聞き、審査機関がその問題に対して適切に対処しているか判断します。解決されなかった場合、公聴会が開かれます。
公聴会のあと、独立裁定人は異議申し立てを棄却、あるいは審査機関に採点結果を変えるよう指示します。
審査機関が変更を求められた場合、独立裁定人は変更を受け入れ、その漁業が認証されます。
または、独立裁定人により異議申し立てが支持された場合、その場合は漁業は認証を取得しません。
費用
異議申し立ては、複数の関係者を巻込み、また独立裁定人の人件費も発生するため、費用がかかります。国連食糧農業機関(FAO)による漁業認証のためのガイドラインは、異議申し立てを行ったものが費用を負担するよう求めています。しかしMSCは、異議申し立てを行ったものが、経済的な理由を立証できるのであれば、費用は完全に免除されると規定しています。
異議申し立てを行ったものへの費用は、全て法的手続きに充てられるものであり、MSC内部での費用や漁業者あるいは審査機関に対する追加費用には充てられません。
意見を述べる
第三者審査機関はすべて、それぞれのウェブサイト上で、提出された意見の処理を行うことが求められます。ステークホルダーが、審査機関や審査員に対しクレームを入れたい場合、最初の段階として審査機関のウェブサイトを利用してください。そのあとで、MSC から独立した認定機関である国際認定サービス(ASI)に、意見を述べることができます。