MSC(海洋管理協議会)は、世界における持続可能な漁業の拡大を加速させるべく「MSC漁業認証取得に向けた改善プログラム」(以降は「MSC改善プログラム」)を開始しました。
「MSC認証漁業への移行プログラム」を経てMSC漁業認証を取得した南アフリカのビンナガマグロ漁業
現在、世界で500以上の漁業が、持続可能な漁業のための国際的な認証プログラムであるMSCの厳格な認証規格に適合しているとして、MSC漁業認証を取得しています。しかし、最新の国連のデータ(注)では、過剰漁獲は増加し続けており、世界の水産資源の約38%が過剰漁獲の状態にあるため、持続可能な漁業を拡大させることが急務となっています。この問題に対処するために開設された「MSC改善プログラム」は、5年の間に測定可能な改善の成果を出すことを条件として、漁業に対する支援とインセンティブを提供するものです。こうした改善は、第三者機関による検証を受けた改善計画に基づいて実施されます。
MSC改善プログラムは、すでに世界で展開されている漁業改善プロジェクト(FIP)を補完するものですが、MSC改善プログラムの最も重要な目的は、漁業のMSC認証取得の達成を支援することです。持続可能な調達への取り組みの一環として、すでに多くの企業がFIP漁業を供給源とする水産物を調達しているものの、FIPの影響と効果は状況によって大きく変化します。MSC改善プログラムによって、FIPの進捗が適切なタイミングで確実に検証されるようになります。このプログラムによって、最も効果的なFIPを認識し、MSC漁業認証の取得に向けた本審査に5年以内に入ることを目指します。
MSCの漁業認証規格アクセシビリティ責任者のアマンダ・リーボウィッツは次のように述べました。「MSCは持続可能性において世界を牽引する数多くの漁業と協働しています。しかし、一刻を争うこの状況下にあっても、これらすべての漁業がMSCの漁業認証規格に適合しているわけではありません。MSCの新しい取り組みは、こうした漁業が持続可能な漁業のための改善を行うことを促進します。そうすることによって、健全な海と将来における水産物の供給が守られるだけでなく、漁業で生計を立てているコミュニティの生活も守られるのです」
MSC改善プログラムに参加する漁業は、持続可能であるとしてMSC漁業認証を取得してはいないため、漁獲した水産物にMSCラベルを使用することはできません。しかし、すべての業績評価指標において最小限の要求事項と、トレーサビリティに関する特定の要求事項を満たすことができれば、MSC認証のサプライチェーンにアクセスでき、また、これらの漁業で獲られた水産物を使用する小売販売用の消費者向け製品には、包材の裏面に MSC改善プログラムに参加している漁業で獲られた水産物であることを示す主張文の表示が可能です。
「MSC漁業認証取得に向けた改善プログラム」は、数年にわたって実施された試行プログラムである「MSC認証漁業への移行プログラム(ITM)」に基づいたものです。2024年8月、南アフリカのビンナガマグロ漁業の一部が、ITMを経てMSC漁業認証を取得した記念すべき初の漁業となりました。
MSC改善プログラムについて詳しくは以下のウェブページをご参照ください。
・「MSC漁業認証取得に向けた改善プログラム」
https://www.msc.org/jp/for-businesses-JP/fishery-JP/fips/improvement-program
・「MSC漁業認証取得に向けた改善プログラム」の詳細
https://www.msc.org/jp/for-businesses-JP/fishery-JP/fips/improvement-program/improvement-program-detail
・「MSC漁業認証取得に向けた改善プログラム」とサプライチェーン事業者
https://www.msc.org/jp/for-businesses-JP/supply-chain/improvement-program-and-supply-chain
注:過剰漁獲に関するデータは国連食糧農業機関(FAO)の「世界漁業・養殖業白書2024」に含まれています。