国連が定めた6月8日の「世界海洋デー」に先駆け、MSC(海洋管理協議会)が行った国際調査の結果を発表します。MSC「海のエコラベル」の認知度の世界平均は50%で、2022年の前回調査より2ポイント増えました。日本での認知度は前回より7ポイント上昇し、22%となりました。また、日本においてMSC「海のエコラベル」がサステナビリティや認証に関するものだと理解している人の割合は36%から41%にアップしました。
今回の調査では、環境に対する懸念から、世界の消費者の半数近くが食生活の転換を図っていることが明らかになりました。
日常生活で選択する食品が地球環境に及ぼす影響について、消費者はこれまで以上に意識するようになってきています。食生活に関するこの調査は、世界23カ国、27,000人超を対象に行われ、食生活を変えていると答えた人の43%が、健康や食品の値段以外に環境をその理由として挙げています。
最も変化が大きかったのが牛や羊などの赤身肉の消費で、調査対象者の39%がこの2年間で摂取量を減らしたと答えています。37%が野菜を多く食べるようになり、11%が魚を食べることが増えたと回答しました。今後については、海に害を及ぼすことがないものであれば、さらに水産物の摂取量を増やしたいと答えた人の割合が全体の27%となっています。
世界の消費者が最も懸念している環境問題は気候変動で、51%がトップ3の問題の一つとして挙げています。このほかにも、森林の減少および破壊(40%)、河川の汚染(38%)、海の健全性および水産資源の減少(35%)に対して高い懸念を持っています。日本では異常気象への懸念が67%と最も高く、海の健全性および水産資源の減少への懸念は37%と、前回の調査から9ポイント増加しました。
日常的に水産物を購入する消費者の間では、世界の海の状態に対する懸念が高まっており、2年前は89%だったのに対して、91%が不安を感じると答えています。不可逆的な被害から海を守れる可能性について楽観的に考える人の割合は少なくなり、20年後には人間がもたらす不可逆的な影響から海を救うことができていると答えた人の割合はわずか35%で、2年前の48%から減少しています。そのように答えた日本の消費者の割合も41%から31%と減少し、同様の傾向を見せています。
こうした暗い見通しにもかかわらず、自然環境保護への意識の高まりに加えて、最近の記録的な暑さなどの異常気象もあり、世界の消費者の64%が海洋環境を守りたい気持ちが強くなったと答えています。
このような問題を解決する方法として、持続可能な漁業が果たす役割について一般消費者の間で理解が進んでいるという結果が示されました。水産物の消費者の55%が、持続可能な漁業が絶滅危惧種や脆弱な種の保護の強化につながるとしており、また、回答者の54%が、健全で豊かな水産資源を維持するうえで持続可能な漁業が果たす役割を認識しています。これらはいずれもMSC漁業認証規格の主要な構成要素です。
MSCジャパンのプログラム・ディレクター、石井幸造は次のように述べています。「この調査結果は、海洋環境の現状に対する人々の関心が高まっていることを示しています。海とその生物多様性を守ることは、地球の健全性にとって不可欠です。過剰漁獲とそれがもたらす大きな脅威に対処するために、さらなる取り組みが必要です。漁業が持続可能なものになることで、現在、そして将来の世代のために海を豊かにし、貴重な食料源を守ることができるのです」
MSCの委託により、国際的な調査分析機関であるグローブスキャン(GlobeScan)が実施した調査の結果は、国連が定めた6月8日の世界海洋デーに先駆けて発表されたものです。人々の行動が海洋に及ぼす影響に対する認識を高め、世界の海洋の持続可能な管理の向上を呼びかけることを目的としています。
グローブスキャンのエグゼクティブ・ディレクター、キャロライン・ホルム氏は、次のように述べています。「今回の結果は、私たちが毎年行っている健康で持続可能な生活に関する調査結果や、世界が直面している問題に対する人々の認識を反映しています。物価高騰の状況にあっても、環境問題は消費者にとって重大な懸念事項なのです」
MSC漁業認証を取得した漁業は、過去3年間に、絶滅の危機に瀕している海洋生物や脆弱な生息域の保護を含む400以上の漁業慣行の改善を実施してきました。科学的根拠に基づくMSCの国際的な漁業規格を満たすとして認証された漁業は、水産資源が持続可能となるよう管理し、広範な海洋環境に及ぼす影響を最小限に抑えることが求められます。
海は地球全体の70%以上を占め、地球の酸素の少なくとも50%を供給しています。また、地球の生物多様性の大部分を支え、世界10億人以上にとっての主なタンパク質供給源となっています。
注記
MSCとグローブスキャンは、2016年から2年ごとに消費者意識調査を実施してきました。2024年の調査は、2024年1月から3月にかけて世界23カ国で27,000人以上を対象に行いました。全回答者のうち20,000人が日常的に水産物を購入する消費者です。