世界で広く認知されている漁業の認証制度と水産エコラベルを管理、推進するMSC(海洋管理協議会)は、「世界まぐろデー」の本日、持続可能なMSC認証のマグロ・カツオ類水産物の需要、販売、および生産が世界規模で急増していることを示す最新データを発表しました。
2021年度(2021年4月〜2022年3月)におけるMSC「海のエコラベル」付きマグロ・カツオ類製品の販売量は、5年前の5万トンより倍以上増加し、過去最高の13万トンに達するとMSCは予測しています。この成長を支えているのが、Lidle、Aldi、Edeka、Rio Mare、Followfood、Waitrose、ウォルマート、John West Australiaといった小売大手や水産大手企業による新たな公約で、マグロ・カツオ類は持続可能なもののみを調達するとしています。
また、持続可能なマグロ・カツオ類の販売量が増加したもう一つの要因は、多くの水産企業・団体が持続可能な漁業に向けた投資を行い、漁業による環境への影響を最小限に抑えてMSC漁業認証を取得したことによって、バイヤーと消費者に対し持続可能な水産物を確実に届けることができるようにしたことです。世界のMSC認証マグロ・カツオ類の総漁獲量は、2017年度は100万トン未満であったのに対し、2021年度にはほぼ200万トンという記録的な水準に達しました。
MSCのチーフ・プログラム・オフィサー、ニコラ・ギシューは次のように述べています。
「持続可能なMSC認証のマグロ・カツオ類の販売量の急増は、持続可能な漁業への大きな転換を示すものです。より環境に優しい漁業と持続可能なマグロ・カツオ類水産物を望む消費者と小売事業者に対応し、マグロ・カツオ類漁業が世界中で急速に変化しているのです」
現在、世界のマグロ・カツオ類漁獲量の39%がMSC漁業認証を取得した持続可能な漁業によって獲られたものです。しかし、商業的に世界で最も重要である中西部太平洋のマグロ・カツオ類資源に対し、その健全性を維持するための長期戦略について国際合意が得られなければ、この発展は損なわれてしまう可能性があります。世界のカツオ漁獲量の半分以上が、そして、持続可能なMSC認証のマグロ・カツオ類漁獲量の86%が、中西部太平洋で漁獲されたものです。
中西部太平洋では、持続可能な漁業において優れた実績があり、健全なマグロ・カツオ類資源が維持されています。しかし、中西部太平洋のマグロ・カツオ類漁業が長期的にMSC漁業認証を維持するためには、この海域のマグロ・カツオ類漁業を管理する26カ国・地域が資源の過剰漁獲を防止するためのルールに合意することが必要です。
ギシューはさらに次のようにコメントしています。
「長距離を泳ぐマグロ・カツオ類に国境は関係ありません。そのため、マグロ・カツオ類の持続的な管理には国際的な政府間レベルでの合意が必要であり、過剰漁獲を防ぐための共同戦略が、すべてのマグロ・カツオ類漁業の認証継続のための条件となります。こうした漁獲戦略については、健全だった資源が減少し始めた場合に、将来の漁獲量削減について多国間で合意する必要がありますが、国際的な管理機関のメンバーの合意を得るのは至難の業です。MSCは、中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)のメンバーに対して、この重要な資源の長期的な健全性を確保するために、また、持続可能性が最も保証されたマグロ・カツオ類製品を望む小売事業者と消費者のために、こうしたルールを採択するよう強く求めています」
マグロ・カツオ類資源と中西部太平洋の現状
- マグロ・カツオ類のうち最も消費量が多いのがカツオであり、サンドイッチやサラダなどに使われる缶詰として多く販売されています。カツオは世界のマグロ・カツオ類漁獲量の60%を占めています。世界のカツオの58%は中西部太平洋で漁獲されています。
- 中西部太平洋のマグロ・カツオ類漁業は、世界有数の富裕国や小さな島国を含む WCPFCの26カ国・地域によって管理されています。世界のマグロ・カツオ類漁獲量の半分以上はこの地域漁業管理機関(RFMO)の管理下にあります。
- 中西部太平洋で漁獲されるマグロ・カツオ類の半分以上は、パラオ、ナウル、キリバス、ツバルを含むナウル協定加盟国(PNA)の小島嶼国が管理する海域で獲られています。これらの国は、マグロ・カツオ類の持続的な管理を公約として掲げています。