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持続可能な漁業が海洋生態系と脆弱な海洋生物の保全を促進

MSC認証取得漁業が2020年に実施した改善措置は100件


MSC(海洋管理協議会)が6月8日の「世界海洋デー」に向けて発表した最新のデータでは、MSCの漁業認証規格を満たし、持続可能な漁業として認証された漁業が2020年に実施した改善措置は100件にのぼり、その半数以上が絶滅危惧種の保全に関するものでした(注1)。

これらの改善措置の例として、オーストラリアのマグロ漁業が保護種への影響を最小限に抑えるために全漁船に導入した機器および電子モニタリングや、カナダのハドック漁業が導入した、脆弱種に分類されるガンギエイ目の一種(英名:Thorny skate)の資源回復を促進させるための新たな措置などが挙げられます。

100件の改善のうちの15件は、漁場の生態系や生息域への影響について漁業者の理解を深め、管理の強化につながりました。アイスランドのエビ漁業では、保全上重要度が高い深海のカイメン群集への影響を避けるために、海底マッピングの研究への支援を行いました。この他にも、漁業管理に関する改善が20件、対象魚種の資源状態改善に向けた措置が11件講じられました。

世界の海がこれまでにない脅威にさらされている中、こうした改善を通じて状況の打開に向けた前進がありました。国連による最近の評価報告書(注2)でも強調されているように、海洋の生物多様性が失われないための対策を早急に講じなければならない分野は数多くあり、過剰漁獲への取り組みはその主たるものです。

MSC科学・規格最高責任者のロハン・カリーは、次のようにコメントしました。
「持続可能ではない漁業慣行は、海洋の生物多様性と生産性に対する深刻な脅威です。しかし、枯渇してしまった資源や損なわれた生態系も、適切な管理によって回復可能です。
世界で400を超えるMSC認証取得漁業は、持続可能な漁業における最優良事例を実践することで、既に先駆的な役割を果たしています。その多くが、地域の管理当局や科学機関と密接に連携しながら、研究やイノベーションの推進力となり、漁業科学の知識体系の進化に貢献しています。
『国連海洋科学の10年』が始まるにあたり、長期にわたって持続可能な海洋を実現するためには、世界中で協働、進展を加速させることが不可欠です。」

持続可能な漁業として認証されるためには、MSCが定めた厳格な要求事項を満たさなければなりません。また、多くの認証取得漁業は、認証取得の条件として特定の期間内にいくつかの慣行について改善措置が求められます。このことが、MSCプログラムに参加している漁業が世界の最優良事例に近づくために努力を続ける原動力となっています。

1999年に最初の漁業がMSC認証を取得するための本審査に入って以来、認証を維持するために2000件近い改善が行われてきました (注3)。2020年には、こうした漁業が世界の海の保護に貢献していると評価する報告が2つの国連機関から発表されました(注4)。これらの報告は、MSC認証漁業が過剰漁獲への対処と、海洋の生物多様性を支える最前線にあるとしています。


注記:
  1. 世界のMSC認証漁業が2000年に実施した改善措置は100件にのぼりました。改善は、認証に付けられた条件を満たすために行われます。
  2. 国連の「世界海洋評価」(WOA 第2版) 2021年4月発行(英語)
  3. MSC認証プログラムが発足した1999年から2021年3月31日までに、MSC認証漁業が認証条件を満たすために講じた改善は、合わせて1931件ありました。
  4. FAO (国連食糧農業機関)は2020年6月、持続可能な漁業は生産性が高く、変化に強いと報告しています。「世界漁業・養殖業白書」(英語)8ページ。2021年9月、UNEP(国連環境計画)は、持続可能な漁業が海洋の生物多様性を保護していると報告しました。「地球規模生物多様性概況第5版」(英語)58-63ページ。