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MSCは魚を管理するのではなく、人々に意欲を起こさせるのです

2050年までに海洋環境を回復させることができるという論文が最近発表されました。これを受けて、MSC漁業規格ディレクターのエルネスト・ジャルディムは、人々が正しい行いをするためには正しい動機付けが必要であると言います。

科学雑誌『ネイチャー』に発表された論文によると、海洋環境は2050年までに大幅に回復させることができるということです。これは、私たちが将来の世代のために海を守ることができるという、漁業者、水産加工業者、認証審査機関、消費者にとってタイムリーな知らせです。

その実現のためには、気候変動の緩和や海洋汚染の軽減の必要性とともに、MSC認証漁業と持続可能な水産物のサプライヤーが重要であると述べられています。

過去20年間で大きな改善があったにもかかわらず、漁業資源の3分の1が未だに過剰漁獲の状態にあります。現在、世界の天然水産物総漁獲量のうち15%がMSC認証の水産物です。私たちは海洋環境を取り戻すための取り組みとして、漁業者や関連団体、サプライチェーンや消費者が行動を変化させるための動機を提供しています。

私たちが持っている最強のツール、それはMSC漁業認証規格です。この規格は、豊かな海を取り戻し、水産物の供給を守るための3つの原則から成ります。認証審査では、認証プロセスの要求事項を満たすために、大部分の認証漁業(およそ90%)が自らの漁業を改善しています。

2050年までに海洋環境の回復を目指すという野心的な目標を達成するためには、海洋生物の保護、適切な漁獲の管理、そして海洋汚染の軽減は欠かせません。有効な管理方法を採用した漁業では、対象資源に回復傾向が見られます。適切な漁獲戦略を持ち、科学的に評価された資源を漁獲する漁業がより回復の可能性が高いということは、私たちにとって驚くべきことではありません。MSC認証を取得したアラスカのヒラメ・カレイ類漁業がそうした恩恵を受けた好例です。

私たちはまた、ASC(水産養殖管理協議会)とパートナーシップを組み、持続可能な海藻養殖の確立を目指しています。海草藻場は海洋汚染や沿岸部の酸性化を軽減させることから、海洋環境の回復において欠かせない一部と見なされており、この取り組みは海草藻場の回復のために極めて重要であると考えられます。

『ネイチャー』誌の論文の著者らによる、持続可能な水産物の質と量を世界規模で増やすための呼びかけはタイムリーなものです。国連の持続可能な開発目標(SDGs)には、2020年までに持続可能でない漁業を根絶させることも含まれています。期限内にこの目標を達成するためには大規模な取り組みが必要です。持続可能な開発目標の14、「海洋および海洋資源の保全と持続可能な利用」の実現においてMSC認証漁業は中心的な役割を果たしていくことでしょう。

どのSDGsの目標も、地球上のすべての人々に食糧安全保障が確保されない限り達成できるものではありません。私たちは、小規模漁業、開発途上国の漁業者を含むすべての漁業が確実にMSCプログラムによる恩恵を受けることができるようにする “Pathway Projects” を通じて変化を推進しています。

海洋環境の回復は経済的に理にかなったものであると同時に、道徳的な責務でもあります。この論文の参考資料によると、世界規模で漁業資源を回復させることによって、漁獲高は15%増え、結果的に世界の水産業界において530億ドルの追加的な収益をもたらすと予測されています。これは、健全な海への関心が薄い人々にとっても行動を変える動機となりうるものです。

生命に満ち、世界に食糧をもたらしてくれる豊かな海を取り戻そうという意志を、人類は持つことができるのだと信じています。私自身が生きている間にこのことが実現できるかについては、そうすることを自らが選ぶかどうかにかかっているということを、この論文は教えてくれます。

毎年、何百ものMSC認証漁業が、何百万トンもの新鮮な天然水産物を私たちに提供してくれています。そして、何千もの製品の中から、MSCラベルのついた製品を選択してくれる消費者の存在が、私に希望を与え続けてくれています。

※『ネイチャー』誌の論文リンク(英語)Duarte, C.M., Agusti, S., Barbier, E. et al. Rebuilding marine life. Nature 580, 39–51 (2020)