兵庫県相生市を拠点とする株式会社マルト水産が、瀬戸内海のカキ漁業で持続可能な漁業に与えられるMSC(海洋管理協議会)認証を取得しました。日本では、北海道のホタテガイ漁業、宮城と焼津のカツオ・ビンナガマグロ漁業などに続くMSC認証取得漁業となります。
今回の認証の対象となるのは、マルト水産の提携先の一つである岡山県瀬戸内市邑久町(おくちょう)の垂下式のカキ漁業のうち、岡山県産の種ガキを使用したもので、邑久町漁協が漁獲するカキの約80%がこれに該当します。2018年の邑久町漁協年間漁獲量は約1,500トンでした。これまでにMSC認証を取得したカキ漁業は地まき式によるもので、垂下式のカキ生産でのMSC認証取得は世界で初めてのことです。
マルト水産では、カキを原料とした製品の製造・販売を行っており、昨今の国内での認証水産物の需要の高まりに対応すべくMSC認証取得への取組みを進めてきました。今回の認証取得は同社が主導し、生産者と漁業協同組合とが一体となって取り組んだ成果です。この度のMSC認証取得によって、マルト水産の原料供給元のカキ漁業が、持続可能で環境に配慮したものであることが証明されました。
申請者のコメント
今回のMSC認証取得に対して、マルト水産代表取締役社長の小久保公博氏は次のように述べています。
「当社は牡蠣を通じた事業をグループ全体で行っていることから、持続可能な漁業、環境に配慮されたMSCの取り組みについて賛同したことが認証取得を目指すきっかけとなりました。今回この認証取得に向けた活動を通して漁協、牡蠣生産者の方々、多くの関係者と密に連携が取れたことは大きな財産であると喜んでおります。同時にこれを販売するにあたり大きな責任感も感じております。今後もこの活動を深め、広げていくこと、また消費者に理解を深めていただくことが持続可能な漁業を推進していくと確信しております。」
MSCのコメント
MSC日本事務所プログラム・ディレクターの石井幸造は次のようにコメントしています。
「認証取得を目指しご尽力されたマルト水産、邑久町漁協関係者に心からお祝い申し上げます。主要な魚介類で不漁のニュースが増える中、MSC認証を取得した漁業で獲られた水産物への需要は日本国内でも大きく拡大しています。企業のSDGs(持続可能な開発目標)に向けた取り組みの拡大や東京五輪の開催を間近に控えていることもあり、小売企業のみならず、外食チェーンや社員食堂でも認証水産物の導入が広がり始めています。今回の認証取得は拡大しつつある認証水産物の需要を満たすことにもつながります。この度の認証取得が、マルト水産、邑久町漁協のさらなる発展につながることを強く願っています。」
今回の審査は、独立した審査機関の Control Union Pesca 社により行われ、対象魚種に関する資源の持続可能性、漁業への環境への影響、その管理システムが検討された結果、この漁業が持続可能であることが認められました。
(了)
マルト水産の垂下式カキ漁業の風景(岡山県瀬戸内市邑久町)
写真提供:マルト水産